291 雨の朝の口笛
小雨の朝、傘をさして、次男と二人、バスを待つ。
道の向こう側から、自転車に乗ったおじいさんが走ってきた。
少し煤けたように見える顔は日に焼けていて、オレンジ色。
ハンドルの片手には、アルミ缶がいっぱい入った袋。
もう片方には、なぜだか洒落たバッグ。
裾の短い黒いズボンをはいて、ゆっくりと通り過ぎる。
私は軽く会釈した。
私たちの姿を視界に入れた頃から吹き始めたおじいさんの口笛。
去っていく後ろ姿。
緑の小道に口笛の音色が響く。
耳を澄ませてみるとそれは、この季節にとても似合う歌だった。
あめあめ ふれふれ かあさんが
じゃのめで おむかえ うれしいな
ぴっちぴっち ちゃっぷちゃっぷ
らんらんらん
おじいさんが、きっと私たちの姿を見て吹いてくれた口笛。
小道に響いた音色は、とてもとても美しかった。
あおがとてもきれいな紫陽花や
澄んだ星空、輝く月のように
とてもとてもきれいな音だった。
おじいさんは無意識だっただろうけれど、
おじいさんの少年の頃を思い、泣けそうになる。
ありがとう、おじいさん。
あなたも、私たちも、今日もよい一日を。
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