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2009.07.31

303 「どうでもいい」の境地

 地元・向山フォレスタ(以前書いたアニキが社長の施設)での養老孟司さんの講演会に行ってきました。これは、施設に入っている「中日文化センター」の移転記念講演で、新聞で告知を知り、すぐに申し込みました。養老さんにも興味あるけど、ハウスウェディングの会場で、講演+コーヒー&デザート付きで1260円ってお得過ぎ!

 こんな感じの会場。 http://www.rouge-ardent.net/

 私は迷いなく前の席でスタンバイ(遅く行ってもひょいと空いてる場所に座れるから一人での行動が好き)。見渡すと、予想以上に女性ばかり。それも50代から60代のマダム多し。アニキたちを探したけど、そりゃ平日の昼間だし、男性はなかなかいない。

 養老さんは、新郎新婦が降りてくる階段を、拍手のなか一人で降りて入場させられ、露骨に困った顔してて(「すみません、こんなジジイの登場で・・」)、おもしろかったです(爆笑してしまった)。

 養老さんの、マルボロメンソールの緑の箱が白いシャツのポケットから透けて見えるくらいの距離でした。

 まずは養老さん、想像以上にかっこよかった!

 講演のお題は「文化のある暮らし」(←確実でない、すみません)で、きっと文化センターに来るようなマダム向けの話だから、数ある講演のレパートリーの中では浅めの話かな?と思っていたけど、そんなことはなくて、とーっても聴き応えあるお話でした。

 印象的だったのは、養老さんは「言葉」というものを信じていないということ。

 これには、氏の戦争体験が響いている(小2で終戦を迎えたそう)。

 それまで届けられていた言葉がウソだった、というのは確かに大きな体験だ。幼い心がまるごと揺さぶられたと思う。

 私たちの世代でも、10年違えば世の中や価値観が異なったりするけど、養老さん(1937年生まれ)前後の10年の違いというのは、比較にならない大きさだろうなあと想像する。「戦争」というのは本当に凄まじい。

 そんなわけで、養老さん世代というのは、世の中にあふれている言葉や情報をまずは「信じない」ことから入る習性がある様子で、「しゃべることも書くことも信用していない。本を書くことも、どうでもいいと思っているから書ける。今の人は言葉を使ったら世の中が変わると思ってるんじゃないかな?」とおっしゃっていた。

 これは私にとっては大きなことだった。

 私は今、言葉でどうにかしてみたいと思っているけれど(もちろん自分の無力も言葉の恐ろしさも痛感しつつ)、それを「どうでもいい」と思えるという姿勢に、うまく説明できないけど、「哲学」を感じた。

 養老さんは、現代は「言葉の地位がおかしい」とも言っていた。

 例えば「オレオレ詐欺」、例えば「インターネットで溢れる言葉」・・・

 同様に、亡くなった河合隼雄さんも、数々の講演で、「私はウソしか申しません」と冒頭でおっしゃっていたそう。哲学で言うところの「自己言及の矛盾」。

 深い。深いです。

 養老さんのご専門は「解剖学」だけど、どんな分野を極めようと、やはりまずは「疑ってみる」という思想が重要なんだろうなあと思った。

 疑うことで、ものをよく観察する。よく考える。

 「哲学」が頭や心の側からの学問だとすれば、養老さんは「解剖学」を通して身体の側から哲学を学んできたように思え、それは説得力あるだろうなあと思った。私は机上の学問を信用しておらず、「体験」や「体感」を併せてようやく信じるほうなので。

 私がやってみたいのも、既存の価値観をまずは「疑ってみる」ということだけど、その姿勢はやはり大切にしたい。

 その他もろもろ、おもしろい話はたくさんあったけど、戦後、<ソニー・本田・松下>ががんばったのは、それぞれの創始者たちがやはり戦争を体験し、言葉ではなく物によって実証すること、「『そういう世界が嘘がなくて安心だ』と思ったんじゃないですかね?」というのにも納得した。日本の発展というのは「敗戦」が大きかったんだなあと先人たちの努力を改めて尊敬する思いだった。私たち世代は物質社会を短絡的に批判したくなるけど、物質を求めてきた世代にはそれなりの精神背景があったわけで・・・。

 以上は、メモをもとにまとめました。

 その他もメモしてあるけど、不確実になっては申し訳ないし、養老さんのお話は決して私ごときが書ききれるとは思ってないので(とはいえ、どう書いたとしても、氏は「どうでもいい」とおっしゃると思うけど)この辺でおしまいにします。

 私はやっぱり「知の巨人」とも言うべき人のお話を聴くことが大好きだ。

 自分の知らないことを知らせてもらえることって快感。頭の中がダイナミックに崩され、再構築されるのって、ものすごくワクワクする。

 これだけ情報があふれている世の中においては、正しい言葉、本物に触れたい。

 その上で、「どうでもいい」と思える境地に、死ぬまでにたどり着きたいなあと思う。

 夏休みの子供を預かってくれる、幼稚園の預かり保育に感謝(小学生の長男もお願いできる)。そして、今のところ夏バテ知らずの息子たちにも感謝☆

 ☆恩恵を授かった「とよはし中日文化センター」のHPです(トップページは少し見にくかったので、施設のご案内・・・建築やロゴがステキなんだ~)。

  http://www.chunichi-culture.com/toyohashi/kouza/photo.html

     

         

 

           

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